今回は、「よもぎ」の英語訳について解説していきます。
真っ先に翻訳として出てくるのは、「mugwort」ですがそれが本当に訳として正しいのか、伝わるのかということが気になり、調べてみました。
よもぎは、ヨモギ餅に代表されるように日本人にとっても馴染みの深い植物で、その用途も多岐に渡り、活用の歴史もかなり古くからあります。
言語設定を英語にして「mugwort」でgoogle検索をすると、このようなサジェストが出てきます。(2020年9月時点)
・どこで購入できるか
・何に使えるのか
・使用用途
・製剤液
・お茶
・レシピ
このような検索需要があることから、海外(英語圏)でも、人々の生活に溶け込んでいる馴染み深い植物であるということが分かります。
それでは、「よもぎ=mugwortで訳として正しいのか」ということについて、品種についても考慮しながら詳しく見ていきたいと思います。
google翻訳とwikipediaでは?
google翻訳では確かに「mugwort」と訳されています。「mugwort」とは英語圏で主にどのような説明がなされているのでしょうか。
・wikipediaではこのように書いてありました。(2020年9月現在)
Mugwort is a common name for several species of aromatic flowering plants in the genus Artemisia. In Europe, mugwort most often refers to the species Artemisia vulgaris, or common mugwort. While other species are sometimes referred to by more specific common names, they may be called simply “mugwort” in many contexts.
wikipedia./Mugwort
「aromatic flowering plants」とは、芳香のある「顕花植物(花を咲かせ、種子をつくる)」のことを指しています。
また、「common name for several species」とありますので、特定の品種を表す言葉ではなく、複数のヨモギ属の一般的な総称ということになります。
ヨモギ属(artemisia属)は、日本国内で30種以上、世界では300種以上の種が確認されているとの情報をよく見かけますが、こちらのサイトでは154品種がヒットしました。
植物和名ー学名インデックス YList
さらに、wikipediaの説明によれば、ヨーロッパでは「mugwort=Artemisia vulgaris」を指すことが多く、日本では「オウシュウヨモギ(ハタヨモギ)」という和名がつけられています。
他の特定の品種については、それぞれの名称で呼ぶ一方で、それらを総称して単に「mugwort」ということもあり、どこまでの品種が「mugwort」で伝わるのか地域差がありそうですね。
日本で使われる「よもぎ」は?
こちらに関しては、以前の記事でも触れています。概略を説明すると「mugwort」と同じで「よもぎ」という単語は「ヨモギ属の一部を総称」しています。
具体的には、日本人が「よもぎ」という場合、「カズザキヨモギ」「オオヨモギ」「ニシヨモギ」を指していることがほとんどでしょう。
この3品種は一見して区別することが難しく、大きさや葉の形状に違いが認められたとしても、区別して呼ぶ人は少ないと思われます。
つまり、日本でも「よもぎ」は一般に良く知られた名詞であるものの、「よもぎ」という特定品種の植物は存在しないということになります。
結論:「よもぎ」は「mugwort」で良いのか?
では、ここまでの情報を踏まえ、「よもぎ」は「mugwort」で正しいのかということを検証していきたいと思います。
「mugwort」と「よもぎ」は、どちらも特定の学名がついた品種を指している単語ではなく、総称だということが分かりました。
重要な点は「mugwort」にしても「よもぎ」にしても、使う人や地域によって、想像している植物に多少のズレがあるということです。
例えば、沖縄県では「フーチバー」という「よもぎ」を指す方言があります。沖縄県で料理に使用されるヨモギ属はニシヨモギであり、オオヨモギやカズザキヨモギとは異なります。
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このように、そば等の料理に使用され、生で食べられていますが、私が東京で摘んだカズザキヨモギの葉は苦みが強く、とても生で食べられるものではありませんでした。
国内でもこのように地域差があるのなら、海外ともなるとそのズレが生じる可能性はより大きくなりますし、「mugwort」が包括する品種の数も多くなるのではないかと推測しています。
ただ、どちらの単語も数百種ある「ヨモギ属」のうちの一部を包括した総称であるという意味では、同じ役割を持った単語であり、結論としては「正しい」と個人的には考えております。
まとめ:曖昧な言葉たち
「よもぎ」や「mugwort」に限らず、総称を指す単語はたくさんあります。例えば「鳥」という場合、ツバメ、ペンギン、ダチョウも鳥の仲間であり、全部ひっくるめて「鳥」です。
細かいことを突っ込むと、ツバメもダチョウも、ペンギンも特定品種を指しているのではなく、これらの単語も総称を表していますが、ペンギンをわざわざ「鳥」とは言うことは稀でしょう。
しかし、この写真を見て「ケープペンギンだ」と答える人は少ないはず。知らない人にとっては、「ペンギン」としか表現しようがなく、ペンギンを知らない人は「鳥」と言うかもしれません。
「よもぎ」と「mugwort」も同じ話だということです。ただ、「ペンギン」より「よもぎ」の方が生息範囲が広く、品種が多いため、地域差が生じやすい要因となっています。
そのため、日本国内で使われている「ヨモギ属」のことを英語で表現したいのなら、「Japanese Mugwort」と翻訳することが一番無難なのではないかな、と思いました。
普段あまり意識することはありませんが、何かを表現するとき、自分の知識の範囲に応じて、適切に単語を使い分けてコミュニケーションしていることに改めて気付かされました。
今回の内容はこれで以上となります。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
30代会社員、web.contents.creater&ヨモギ研究家。参加サークルで小説を書いている。塾講師歴10年、2019年退社。その経験を活かし、教育関連のコンテンツや記事を作成。
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